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2005-05

38 恋 小池真理子 著 - 2005.05.27 Fri

 この三日ほどの間、寸刻を惜しんで読んだ。面白かったわー。まさに今、私自身が書き進めている作品と符合するところも多々あって、面食らいながらも大いに揺さぶられてしまった。
 これを読みながら、倉橋由美子の『夢の浮橋』を思い出す。その昔、かなり本気で反発しながらも大いに惹かれた作品だったのだが、それと似ているようで似ていない。似てはいないけれどチラチラと思い浮かんでしょうがなかった。
 これだけの作品を書いて、直木賞かぁ。作家って、大変なんだーと、心の底から震えるような思いで読んだよ。
 さてと、余韻、余韻。これからじっくりこの余韻に浸りつつ、振り返ってみるとしますか。
 あ、そうそう。『恋』というタイトルで、まあ恋について描かれてはいるのだけど、恋の話を読みたいと思って読んだら、ちょっと違うかもしれない。もっともっと、おぞましくおっとろしいお話だから、どうぞお腹を据えて読んでください。
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37 くっすん大黒 町田 康 著 - 2005.05.21 Sat

 久しぶりに笑える小説を読んだ。文春文庫で、あと一作『河原のアパラ』も入って410円。
 笑えるだけじゃない。ブラックジョークとはかくやと言うようなエグイ部分もあったり、文体はいにしへを思わせる復古調で、なかなか洒落ていたりもする。
 この作者の略歴を見ると、これまた凄い。パンクバンドでレコードデビュー、文学界に『くっすん大黒』(処女作だそうだ!)を発表し、のち野間文芸新人賞、『ドゥマゴ文学賞』『芥川賞』、そして『川端康成賞』やら詩では『萩原朔太郎賞』まで受賞しているのだ。
 おまけに文庫本の解説を書いている評論家のセンセイまで、すっかりくっすん大黒調の語りに感染せしめてしまい、「梶井基次郎の『檸檬』と通じるものがあり、太宰治、坂口安吾、織田作之助の系譜」だとまで言わせてしまっている。
 ちょっと待て。梶井の『檸檬』と言えば、私の原初的な作品のひとつでもある。それと並び称されてもよいものか。うーん。わっかりませーん。でもね、梶井をもう少し長生きさせて現代に置いてみるなら、こういう作品を書かなかったかと言うと、これまた書きそうな気もしないではなく・・・。
 結局は、町田サンよりも遥かに下層から彼を見上げて、歯切れの悪いことをモゴモゴ言うしかない私なのでありました。

36 アムリタ 吉本ばなな 著 - 2005.05.15 Sun

 はじめてのばなな体験である。文庫本上下2巻、それにしても読み終えるのに時間がかかった。読み進むにつれ、好きと嫌いが反復する。辟易としながらも納得し、頷いたかと思えば反発心も湧き起こる。これまた不可思議な世界だった。

 若さにしか内在しえない過剰なまでの感性。感じて感じて感じまくることをまっすぐに描いているから、時として読んでいることに疲れてしまう。それでも、共感せざるをえないフレーズに必ずぶつかる。気がつくと、作者と共振しているのだ。感じるということの普遍性を、強く意識させられた作品である。

 人の思いは決して定まらない。定まるものだと思い始めたら、それが歳をとるということ。本当の老化、固化の始まり。フリーズしちゃいけないんだ。どんなにきつくても新陳代謝した方がいい。朝起きて、再び選び直す。自分の「好き」が何かということ、人との関係、ものとの関係。そしてたとえノンの答えが出たとしても、澱み腐ってしまうことよりずっといいと思う。そう思えることが、何よりも若さの証明なのかも知れない。

 さまざまな風景描写=心象描写があって、その過剰ぶりに疲れてしまうことで、自分の年齢を逆照射されたようなところもあるのだけれど、そういう部分について面白い見解を聞いた。
 つまり、コトバが物語に奉仕しない書き方を敢えてしているのだと。物語に貢献しないコトバを連ねて、物語を紡ぐ。そこに胡散臭さ、鬱陶しさを感じるか、あるいは魅力を感じるかは読者それぞれにもよるだろう。

 ここに抽出したいフレーズも山ほどあった。作者の思いがギッシリと詰まった作品であるだけに、この年齢の私にさえ警句になるような、あるいはハッとさせられるような鋭いものが随所に描かれている。冗漫すぎるほどの文章の中に、それらが散りばめられているものだから、読んでいるこちらとしては、少しも気を抜けない。

 この作品、果たして好きなのか嫌いなのか、実は読み終えた今もよくわからない。しかし、これだけは言える。登場人物のすべてが、この上なく魅力的な人たちであると言うこと。子供も大人も、男も女も、素敵に生きている人たちであるということだ。

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