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15 勇魚(いさな)  C.W.ニコル著/村上博基訳 - 2004.11.17 Wed

 とても勇壮な物語です。
 鯨に魅せられた私が、次に手にしたのが、この作品でした。捕鯨で名高い紀州・太地に生まれ、将来の筆頭刃刺と目されながら、鮫に片腕を奪われ失意のどん底にあった青年・甚助。紀州藩士松平定頼との邂逅を機に、甚助の運命は、激変します。舞台は紀州に留まらず、琉球、江戸、横浜へ展開し、さらには外地にまで甚助を運びます。
 ときは幕末。海防の要を説く松平定頼の秘偵にとりたてられた甚助と、徐々に世界に目を転じはじめた幕末の群像。そして決定的なジョンこと中浜万次郎との出会い。
 ニコル氏が、8年の構想のもと、太地に起居して取材しながら書いたといわれるこの作品には、汐の香りが満ち満ちています。当時の捕鯨の描写も稠密で、村の人々の心の襞にも分け入りながら、熱くたぎる青年たちの想いを積み上げていきます。
 鯨をはじめとする自然の雄大さ、そこに組する人々の真っ直ぐな生きざま、新しい時代への激動期にあって、不運を力として逞しく生きる青年の姿に、無条件に酔える作品でした。

文藝春秋社 読んだ時期:1998? 2002.6.13記
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