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24 柔らかな頬  桐野夏生著 - 2004.11.18 Thu

 桐野夏生作品との出会いにしては、その第一印象は決してよいとは言えませんでした。何年かぶりに買ったハードカバーであったわけですが、意気込みが大きかった分、釈然としない重苦しさを残してしまいました。始めて読む作家に、かなり慎重になっていたのでしょうか。
 主人公であるカスミが、夫以外の男に心惹かれて関係を続け、その渦中で一人娘が忽然と姿を消してしまいます。カスミは自分を責め苛みながら娘を探し続けるのですが、それは果てしもない孤独な戦いでもありました。娘探しは、自分探しでもあり、娘を追えば追うほど暴かれてゆく自分自身を抱えて、カスミはさらなる孤独の裡にはまり込んでゆきます。
 末期癌で余命いくばくもない刑事、新興宗教の老祖などが登場して、カスミと関わってゆきますが、本質的にはカスミの殺伐たる心を潤すことはできません。もちろん、夫も、不倫相手の男も。
 もしもカスミが夫以外の男に心を奪われることもなく、平穏に暮らしていたなら・・・。カスミはこうした自分自身を暴かなくてもすんだのでしょうか。子育てという日常の中にあって、何一つ自分に突きつけることなく、穏やかな日々を送ることができたのでしょうか。
 エンディングのない小説、と言って過言であるならば、謎が解き明かされないままのミステリーと言えばよいのでしょうか。犯人を特定することのない結末に、飲み下せない丸薬をいつまでも口の中にころがしているような後味を味わったことは、確かです。それでも、作品としての充足感は、十二分にありました。
 では、私の中に残った釈然としない重苦しさとは一体なんであったのか。それは、もう一度読んでみることでしか、その問題意識も、また回答も、導き出せないような気がしています。

講談社 読んだ時期:2000 2002.07.6記
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