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27  晴子情歌 上・下  村 薫 著 - 2004.11.18 Thu

 サスペンスの女王と言われ続けてきた高村薫の、純文芸作品。昭和史の激変のうねりの中、晴子という女性を軸に、時代のいくつかの事件にスポットをあてながらも、きわめて内省的な世界が展開します。母晴子から息子彰之に宛てた大量の書簡と、現代を生きる息子の意識世界。その背景として、戦前の東京本郷界隈、青森の雪に閉ざされた農村、北海道での鰊漁、東北の素封家の内情、戦後復員してきた男の苦悶、などが緻密に描かれ、時代の中を黙然と歩んできた晴子の姿が浮き彫りにされます。
 晴子の書簡文は旧字体を用い、書き手の素養や生き様は斯くあらんと察せられる美しい文体です。そこで語られる出来事や登場人物も、ありありとその情景を思い描くことができ、物語の骨格と作り出していきます。他方、その手紙を読んだ彰之の描写となると、その文体は閉口するほど濃密で、緩慢で、観念的で、ひとつのセンテンスがとても長く、彰之の意識内に引きずり込まれていくような、重苦しさに捕らえらてしまいます。
 ことばにしてしまえば明瞭なことも、ことばになる以前の意識界は、おそらく無明の渾然とした世界なのでしょう。鼻や口などの呼吸器官からの呼吸ならばまだ意識されることもあるけれども、皮膚呼吸のさまなど、一体誰が意識しているでしょう。ここに描かれている彰之の世界は、まさにそういった皮膚呼吸の世界のようなありようなのです。一見、脈絡も無いように次々と描出される大量のことばの世界は、否が応でも読んでいる者の意識を締め付けてくるような気さえします。
 高村薫氏は、あるインタビューに答えて、「自分が生きてきた二十世紀という時代を、自分のために、どうしても書いておく必要があった」という意味のことを語られていました。五年という歳月をかけて投じられた、高村文学の金字塔。私は、敢えてそう称したいと思います。

 付け加えるならば、東北・北海道地域における農山村・漁村の営み、旧家のありよう、戦前の鰊漁、そして現代における漁業など、膨大な取材をこなしながら描かれた未知の世界に、瞠目させられました。

 とても読み応えのある、素晴らしい作品です。

新潮社 読んだ時期:2003.05 2002.05.24記
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