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2017-08

40 ポポイ 倉橋由美子 著 - 2005.07.02 Sat

 ネットを介した友人のひとりが、倉橋作品の中で一番好きだとおっしゃっていた『ポポイ』を読んだ。面白かった。期待も予想も裏切って、とっても面白かった。

 ギリシア神話・上流一族・教養溢れる主人公の女の子・慧(=Kか?)という名の青年。と、倉橋作品のキーワード的駒が並ぶわけだが、これをまったくの独断的勝手な読み方で読ませてもらった。
 まず、文章がいい。どうしてこんなに倉橋作品にこだわるのか、最大の理由がきっとこれだ。今読んでいる『シュンポシオン』の中に、「ギリシアの空を思わせる明晰な文体」という表現があるのだが、まさにそれは倉橋文学のことのように思える。
 同時に、日本の古典的表現世界からも、日本的情緒のまとう多湿な空気を抜いた形で、すくいあげてくる。きっと、文体にも相性というものがあるのだろう。めいっぱいの反発や疑問を抱きながらも、倉橋文学から離れられないのは、彼女の文章にとてもとても惹きつけられていたからのような気がする。簡潔で清明、不惑、そして凛としている。

 ところで、「脳死」という概念がある。「大脳および脳幹の全機能が完全に停止している状態。脳死をもって個体の死の判定基準にできるとする考え方もある。」と、これはYahoo辞書よりの引用。
 では、脳だけが生きていて、脳以外が死んでいる場合はなんなのか。首だけの存在を、人間と称することができるのか。私たちは、どういう基準によって死を、あるいは生を認識しているのだろう。
 このお話、2030年ごろを舞台にして、首だけで生かされている、ポポイと名づけられた美少年を核として展開する。また彼と対置する位置に、主人公の少女の祖父が登場する。脳溢血で倒れ、喋ることを拒絶した老人。両人とも、意識はあり、また他者とのコミュニケーションを途絶させてはいない。

 逆説的、余りにもパラドックスな世界を展開してくれながら、まっすぐな矢で射抜かれたような気がするのは、きっと私だけではないのだろう。FM東京のラジオ・ドラマのために書かれたというこの作品、ラジオを離れて、書籍として独り歩きして多くの読者を得たと言う。さもありなんと納得の一冊。
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