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44 ルート350  古川 日出男 著 - 2006.08.27 Sun

 小説というのは、抽象化、象徴化の結晶だろう。
 写実的であるとかリアリティがあるとか言われても、土地や歴史や人物などの事象がたとえ固有名詞で名指されていたとしても、それは具体的な現実そのものではなく、表現するための何ものかであるはずだ。それは、作者の意図や姿勢に関わりなく、結果としてどうしてもそうなってしまうということなのだと思う。

 日常的で身近に見聞きしていることがらについて、微に入り細に入り描写された小説も好きだ。乃南アサの『幸福な朝食』で、キャベツを刻み続けて部屋の中に千切りキャベツが溢れてしまうシーンとか、角田光代の『エコノミカル・パレス』で、どこどこの店でいくらのものを買ったとか、身につまされるほど生活感に即したものも、面白いと思う。何よりも、そうした日常的な事物は、読み手としても何ら苦しむことなくストレートに反応することができるわけだから。

 前置きばかりの感想になってしまいそうだが、この『ルート350』は、そうしたリアリティからは少しばかり離れた見せかけを持つ作品群だ。たとえば、誰もが気づいてしまう施設名を敢えて用いず、一般名詞に置き換えて話を進行させる。単純で見え透いたレトリックだが、敢えて名を伏せたことで、その施設は特定のものから解き放たれ、同時に作者の意図がよりわかりやすいものとして見えてくる。

 だからかもしれない。わけのわからない抽象的な物語、そんな外見を装っていながらも、どこかで必ずこちらの胸の奥をチクリと刺してくる。あるいは苦笑いを漏らし、ときには声に出して笑ってしまう。

 最後に収められた「補記」で、
 『たぶん僕は文体に関しては自意識過剰で(だから作品ごとに表面的なスタイルは激変する)、モチーフに関しては無意識過剰なんだと思う。』と語っているが、この自意識過剰文体、私は好きだ。

 この短編集に収められた作品たちのタイトルを、記しておこう。

 「お前のことは忘れていないよバッハ」
 「カノン」
 「ストーリーレイター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」
 「飲み物はいるかい」
 「物語卵」
 「一九九一年、埋め立て地がお台場になる前」
 「メロウ」
 「ルート350」
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